焼入れって基地の鉄がΓ相になる温度まで加熱して、炭化物を分解させ炭素を基地に固溶させなければいけない。
ステンレス鋼などは1030~1080℃といった温度まで加熱して、保持時間は10~20分という時間が必要だ。これはCrなどの合金元素が、炭化物の分解と基地への炭素の固溶拡散をしにくくしているからだ。
炭素鋼の場合は合金元素はないので、保持時間はごく短いものだと思っていた。
しかし実際は保持時間はある程度必要らしい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1970/20/8/20_8_384/_pdf/-char/ja
この資料の図1にある様に、加熱温度が一定になる電気炉等でやる場合は3~5分程度は保持時間が必要の様だ。
他にも資料を調べると炭素鋼であっても、確かに相変態と炭化物の固溶には時間が掛かる様だ。
共析鋼(0.8%C程度の炭素鋼)の場合、800℃付近の温度では数秒で一応Γ相になるが、C濃度は不均一で、均一なΓにするには20分もかかるそうだ。
ある温度で固溶できる炭素量は決まってくる。規定量に炭素を固溶するには炭素鋼であっても、ある程度の保持時間が必要なんだな・・・
ここ何年かJKGの野外例会に通って鍛造教室を受けているが、焼入れの際はそんなに保持時間は取っていない様に見えた。
そもそもコークスや炭を使った火床では、温度を一定に数分間保つ事が非常に難しい。
色々考えてみたら、どうやら温度を高目にして保持時間を短くしているという事が分かった。
実際今年の鍛造教室で温度計を使って焼入れ時の火色の温度を測ってみた。思った以上に温度が高かった・・・
以前焼入れ温度は状態図に照らし合わせるとズレがある事を書いた。
理論と実際にはズレがあるもんだが、炉の特性も考慮しないといけないんだな。
焼入れを容易にするためには、炭化物の均質分布とその球状化が重要になる。
焼入れで加熱しても、溶け残った炭化物が基地の結晶粒成長を妨げる。ピン止め効果というそうだ。
炭素量が増えると鍛造はしにくくなるが、焼入れは容易になる。状態図を見れば明らかだが、Acm線とA1線の間が広くなるから温度範囲が広がるからだ。
鍛造教室の時、焼入れ作業を見ているとベテラン達は、焼入れ温度まで加熱したブレードを炉から引き揚げてすぐに冷却液に漬けるのではなく、色味を見て少し間をおいてから冷却していた。
理由を聞くと、すぐに冷却すると硬さが十分でないからだとの事だった。
おそらくすぐに冷却すると炭素の固溶量が多すぎるために、残留オーステナイトが増えるからなのだろう。
間をおいて僅かに冷却して炭素を吐き出させているんだと思う。大物のブレードの場合は、全体の温度を均一化する意味もあるのかもしれない。
吐き出された炭素が基地の結晶粒界に析出しないのか?と思われるかもしれないが、実際には溶け残った炭化物を核に成長するので元の球状炭化物に戻る。そのためにもAcm線を越えて全て炭化物を固溶させてはいけない。核が無くなれば結晶粒界に析出してしまう。
冷却はもちろんA1線より上の温度までとしないといけない。それを下回ると基地にフェライトが出るので硬さが十分でなくなる。
では焼入れの温度って何度でやるのが適正なんだろうか?
結局のところ炉の特性や使う鋼材によって変わってくるものなんだと思う。
炉の特性の違いは結構大きいのかもしれない。加治屋さんごとに違いがあると思う。
鍛冶屋さんは色で温度を判断する訳だが、これも作業場の明るさで見え方は変わってくる。
温度は定量的に測れないものなのかと考えたが、一定温度に保てる炉ではないので炉内の温度を熱電対で測っても意味はない.
加熱したブレードを放射温度計で測っても表面温度でしかないし、そもそも放射温度計では精度よく短時間で計測する事は無理だろう。
色で温度を見るってのも案外合理的なんだと思う。
焼入れ温度を職人気質のベテランに聞くと「温度は測った事がないのでわからない」と言う。
成功する色を覚えていて、その色でやれば間違いないってのがあるんだと思う。
そういった人は鋼材も一種類しか使っていない。焼入れの際は暗幕で外光を遮り、一定の暗さにしていた。
職人は経験によって作業方法を習得している訳だが、その作業は理論に照らし合わせると、非常に理に適ったものなんだ。
鍛造教室は今まで7回ほど受けているが、まともに刃が付くものが出来たのは2本しかない・・・
結構研いでみると刃先がポロポロ欠けてしまう物が多く、組織に問題がある様だ。鍛造や焼入れ温度に問題があったのだと思う。
そもそも野外の特設鍛冶場でやる事だから、ある程度仕方がないのかもしれない。ベテラン達も火色を見るのには苦労していた・・・
まあ失敗したからこそ分かった事が多かったんだなw
では焼入れの温度って何度でやるのが適正なんだろうか?
結局のところ炉の特性や使う鋼材によって変わってくるものなんだと思う。
炉の特性の違いは結構大きいのかもしれない。加治屋さんごとに違いがあると思う。
鍛冶屋さんは色で温度を判断する訳だが、これも作業場の明るさで見え方は変わってくる。
温度は定量的に測れないものなのかと考えたが、一定温度に保てる炉ではないので炉内の温度を熱電対で測っても意味はない.
加熱したブレードを放射温度計で測っても表面温度でしかないし、そもそも放射温度計では精度よく短時間で計測する事は無理だろう。
色で温度を見るってのも案外合理的なんだと思う。
焼入れ温度を職人気質のベテランに聞くと「温度は測った事がないのでわからない」と言う。
成功する色を覚えていて、その色でやれば間違いないってのがあるんだと思う。
そういった人は鋼材も一種類しか使っていない。焼入れの際は暗幕で外光を遮り、一定の暗さにしていた。
職人は経験によって作業方法を習得している訳だが、その作業は理論に照らし合わせると、非常に理に適ったものなんだ。
鍛造教室は今まで7回ほど受けているが、まともに刃が付くものが出来たのは2本しかない・・・
結構研いでみると刃先がポロポロ欠けてしまう物が多く、組織に問題がある様だ。鍛造や焼入れ温度に問題があったのだと思う。
そもそも野外の特設鍛冶場でやる事だから、ある程度仕方がないのかもしれない。ベテラン達も火色を見るのには苦労していた・・・
まあ失敗したからこそ分かった事が多かったんだなw
投稿が気になるので「入門・金属材料の組織と性質」注文しました。
返信削除この本は具体的な数値やグラフを多用して解説されているので、なかなか面白いですw
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