2019年10月26日土曜日

シース作った

 シース製作のご依頼あったのだが、やっとこ完成した。
えらく時間が掛かって申し訳ない・・・
しかしこんなでかいシース作るのは久しぶりだ。
凝った作りにはせず、普通にオープンタイプで作った。
結局シンプルな作りの方が丈夫で使いやすい。


 中身はドラさんのナイフだw
持ち主はこれを使って単独猟で猪を一猟期中に数十頭獲ってるらしい・・・
ワンコが止めてこれで留め刺すそうだ。銃より活躍してるらしいw

 こんなハンドル整形はおいらには出来ないだな・・・
持ち主の好みで、やや小ぶりなハンドルだが、なかなか握った感じはいい。

使い込めばこんな感じになるだろう。
案外革シースも実猟で使える。
年月経ってどう変化するのか楽しみだ。
活躍してくれたら嬉しいw

2019年10月15日火曜日

今年のたたら

三日連休 は岡山の長船にたたらを見に行ってきた。
土曜日は台風が上陸しつつあったが、台風の暴風圏の端っこをかすめる様に西に進んだ。
途中の雨は半端なかった・・・

兵庫と岡山の県境まできたら、西の方が晴れてきた。
どうやら台風の外側らしい。でっかい台風だったな・・・

 午前2時頃に家をでたが、長船着いたのは午後の2時過ぎだった・・・
とりあえず刀剣の里に行ってみた。
えらい人出で中庭まで駐車場になっていた。
国宝の山長毛を展示してるからか?

片山さんの作業場行ってみた。刀に彫刻中だった。
現場では炉を構築中との事で、挨拶そこそこに現場に向かう。
たたらを行う満足刀匠の鍛刀場に到着。
みんな集まって炉を作っていた。


 炉壁用の粘土をこねる。
炉壁は操業中に融けてノロ(スラグ)になる。そのために必要な成分が含有した土を何種類か配合してあるらしい。











耐火煉瓦を積んだ中に粘土を貼り付けて炉壁を構築する。
粘土玉にするのは、中に空気が入らない様にするためなのかもしれない。味噌作りの時も同じ様にやるものなw

炉の上部は土管を載せる。
単なる土管ではなく、耐火セメントで作った特別製らしい。
昨年は半切りのドラム缶を埋めて炭をつめて作ったカーボンベットを炉底としたが、今回はレンガを敷き詰めてカーボンベットを作ったらしい。
 中はこんな感じ。
土管の内径は300㎜程度で耐火煉瓦部から粘土が貼られて、炉床に向かってすぼむ様になっている。
炉床は長方形で両方の短辺側にノロ出し口があり、長辺側に二本づつ送風のための羽口が付いている。
羽口は炉底に向かっていて、円錐形状に絞ってあり、炉内側の穴径は30㎜程度になっていた。
 炉が完成した。
初日の作業はここまで・・・

 刀剣の里に行って三長毛を見てきた。
刃紋がえらく派手というか、妙に立体的に見えて不思議な感じがした。沢山の刀剣が展示されてる中で妙に浮いた感じ・・・
刀剣の事はよく分からんだなw










次の日は朝からえらく晴れていた。
時折強い風が吹いて心配だったが時期に収まった。


 薪をくべて内部を乾燥させる。
 送風機と鞴を設置して、薪をガンガン燃やしていく。
温度計で炉底の温度を測ったら1000℃程度まで上がっていた。
使用温度範囲が1200℃までなので、本番の操業中は使えない・・・
炭が詰まった操業中だと羽口周辺の温度は、おそらく1400℃程度は行っていたと思われる。
 芋焼いてくれたw

 たたらoff参加の若い刀匠がたたらの解説をしてくれた。
今回やるたたらはケラ押し。ケラとは半溶融状態の鋼で、ズクは熔けて固まった銑鉄の状態になる。
当然炭素量はケラの方が少なく、ズクの方が多い。
 炉を乾燥中に炭を切る。
八俵分切るのは、なかなかの重労働だ。
何より頭から足の先まで炭の粉で真っ黒だw
 切った炭を選別する。

 鮎を焼いてくれた。
美味かったw
鉄鉱石を砕く。
操業はじめに投入して種になるそうだ。
ノロの生成を促す作用もあるんじゃないかな。

 炭を投入開始。
すりきり一杯詰め込む。
昨年は結構ぎゅうぎゅう詰めにしていたが、今年はなるべく軽く詰めていった。

 炭が燃えだしたら最初は鉄鉱石を投入。

砂鉄は海岸で集めてきた真砂砂鉄だそうだ。
昨年までは磁石で選鉱していたそうだが、今年は金穴流しの要領で比重選鉱したらしい。
選鉱した砂鉄を洗濯糊で固めて板状にしてある。

いよいよ砂鉄の投入。
一回に1㎏づつ投入すして炭をすりきり一杯つぎ足す。
これを10分おきに繰り返す。
大体10分で100㎜程度沈降する感じだった。


 近くに落ちてた栗を拾って煮てくれた。
ほんのり甘くて美味しかったw

 日が暮れてきた。
今年は無理くり詰める様な事はしなかったので、通風がよかったみたいだ。
鞴の調子に合わせて炎が軽やかに揺らめいた。
 炉から噴き出した炎は、直後は還元炎だったものが外気と触れると酸化炎になる。
 ある程度のところでノロを出す。
昨年はノロがなかなか出なかったが、今年は勢いよく出てきた。
ノロは炉壁の粘土に含まれる珪酸塩などが還元された鉄に含まれる不純物と反応してできる。
ノロはアーク熔接で溶融地を覆うスラグと同じ役目をしている。
還元された鉄(ケラ)の上を覆って炉内雰囲気を遮断して、必要以上に吸炭をや酸化を防ぐ作用がある様だ。
砂鉄は炉の中層で還元され羽口付近で吸炭し、ノロに落ちて炉底にケラとして降り積もる。
ノロが溜まりすぎると支障があるので、定期的に排出する必要がある様だ。結構ノロに鉄が食われて歩留まりが悪くなるのかもしれない。


 終盤になってきた。
羽口には詰まり防止のためのメンテナンス用の覗き穴があるのだが、熔接用の遮光シートを使って覗くと炭が炉内に沈降してくるのが見えた。結構炉底部近くでも炭は形を保っている様だ。
 最後のノロ出し。
ノロは炉から出た途端は水の様だが、すぐに飴状になり時期に固まる。
流動状態になるには1000℃以上の温度が必要なんじゃないだろうか。
 ノロ出し口から内部を見てみる。
ケラはあるのか?
 いよいよ炉の解体を始める。
まだ残った炭が勢いよく燃えている。


 レンガを外していく。
位置によってはレンガが真っ赤に焼けていた。

 丸裸になって粘土の炉壁だけになってきた。



 粘土の炉壁を解体。
焼き固まって結構硬い。

 内部はもの凄い熱量だ。
熱線が刺さる様に熱く痛い。


 ケラを探す。
なかなか出てこない・・・

見つけた!
結構でっかいw

 金床に乗せて叩き割る。


 水を張った桶に投入。
水はあっという間にお湯になった。


 ケラの出てきた後をさらに浚ったら、まだ溶けて柔らかいズク(銑)が少量出てきた。


 ケラは9.3㎏だったそうだ。
なかなか見事な玉鋼が出来た。
 ズクは1.4㎏あったらしい。



 炉壁は羽口付近の浸食が激しい。厚さはぎりぎりだった。
当初砂鉄は30㎏の予定だったが、10㎏を追加していた。結構絶妙だったのかもしれない。
使った炭は8俵分で約102㎏だったそうだ。
40㎏の砂鉄から約10㎏の鉄が出来た。まあまあの歩留まりなんじゃなかろうか。
しかし炭の消費量が若干多い様にも思える。
砂鉄と炭の投入具合をもう少し工夫すると、炭の消費量を抑えられるのだろうか・・・


最終の三日目まではいられないので、ケラ出しを見届けたら帰ってきた。
片付けを手伝えなかったのが申し訳ない・・・
しかし興味深いものを見れた。
参加の皆さん、お疲れ様です。ありがとうございます~