2020年1月31日金曜日

二度焼入れすると・・・

 RWL34の熱処理終わったブレードなのだが、訳あってもう一度熱処理した。
粉末鋼なので炭化物によるピン止め効果があるから大丈夫だと思っていた。
しかし組織を観察してみたら、見事に焼入れ過熱の組織になっていた。
画像は600倍、横の画角が約100μm。
基地にひび割れがあり、典型的な過熱組織になっている。
こちらは適正な熱処理をしたRWL34の組織。

過熱組織はおそらく炭化物が過剰に溶け込んだからなのだと思う。二度続けて焼入れする事で、必要以上に溶け込んで過熱焼入れと同じ状態になったと思われる。
硬さを測ってみたところ、想定したより低かった。これも過剰に炭素が溶け込んで残留オーステナイトが増えたからと考えられる。サブゼロをやっていても低温焼き戻しの場合は10~20%程度は残るそうだ。

再熱処理するときはどうするべきか?
おそらく一度焼鈍してから行えばいいと思う。炭素を吐き出して炭化物に戻しておけばいい。
しかし応力除去の焼鈍しと違って、焼きの入った合金鋼の焼鈍しはなかなか難しい。
結局のところ焼入れのやり直しはやるべきではないんだなw

一つ面白いと思ったのは、過熱組織のひび割れは炭化物で遮られて、それ以上伸びてはいない。
ひび割れはオーステナイト結晶粒の結晶粒界であるわけだが、均一に分布した炭化物により結晶の成長が妨げられているのだ。これがピン止め効果なんだな。
画像で見える4μm前後の炭化物は溶製鋼でいうところの共晶(一次)炭化物に相当するので、溶融する寸前まで加熱しても変化しない。
この部分が粉末鋼の本質なんだ。これが見れただけでも失敗した甲斐はあったw


試しに研いでみたが、とりあえず刃は付いた。
しかし確実に靭性は低いと思われる。もともと粘る粉末鋼なので、案外それなりには使えるのかもしれない。
残念ながらこれでは表には出せない・・・
しかしもったいないのでとりあえず完成させて、自分で使ってみる事にしようw

2020年1月27日月曜日

雪ないね・・・

 昨日も勢子やった。
例年なら雪でとてもできない猟場をやった。今期は所々に雪が残ってるだけだ。
自分は下から二番目の位置を攻めた。ベテランの勢子の指示に従い、各等高線に勢子を直線に並べて進んでいく。しかし斜面が急で歩きにくい。なかなか直線を維持するのが難しい。
タツマの方で景気よく銃声が聞こえる。「50頭の群れだ~」とか無線で聞こえるが、果たしてそんなにいるのか?話半分としても20頭ぐらいの群れは確かにいたそうだw
半矢の獲物を追っているのか、ワンコがすぐ上を通りすぎたりしたが、なかなか獲物を見る事はなかった。

途中渡った沢は凍り付いて滑り台の様になってた・・・
2000m近い標高なので、気温は結構低い様だ。
 本来なら雪が相当積もってるはずだが、日向は雪が解けてまだ笹の葉も沢山出ていた。
これでは鹿達も山の下には降りてこない・・・

大分タツマに近くなった時に、自分のすぐ上の勢子が突然発砲した。
目の前に鹿が出たらしい。タツマのすぐ近くだったのだが、勢子が来るまで潜んでいた様だ。
3頭目の前に出て1頭は斃したが、2頭は逃げて行ったそうだ。




ナイフを忘れてきたというので、上の勢子のところに行ってみたら、結構大きな雌鹿が獲れていた。
実質二猟期目の若手なのだが、今回初めて鹿を獲ったそうだ。よかったよかったw
右前足の肘のところが撃たれて折れていたので、どうやら半矢だったらしい。そのためか勢子が近づくまでじっと潜んでいたのかもしれない。
逃げた2頭はすぐ上にいたタツマに掛かり1頭獲った。距離が大分あったが何とか中ったそうだ。
本当はタツマの間にもう一人勢子がいたのだが、遅れていて出会わなかった様だ。勢子が並んでいればまた結果が違っていたかもしれない。何はともあれ獲れてよかったw
この日は鹿4頭獲れた。結局獲物を見る事はなかったが、なかなか面白く楽しめたw











2020年1月24日金曜日

炭素鋼と合金鋼の違い

以前書いた過熱焼入れの炭素鋼の組織
概ね旧オーステナイト結晶粒は赤線で示した感じになってると思われる。

こっちはやはり以前書いたD2の過熱焼入れの組織
これの場合は旧オーステナイト結晶粒はこんな感じと思われる。






条件の違いもあるが同じ過熱焼入れ組織でも随分様子が違う。
炭素鋼が過熱しすぎと言う事もあるのかもしれないが、旧オーステナイト結晶粒がD2の場合はそれ程極端に大きくなっていない。
おそらくD2の方は基地に溶け込まない一次(共晶)炭化物があって、基地のオーステナイト結晶粒が成長しにくいのではないだろうか。(余談になるが粉末鋼はこの性質を利用している。一次炭化物に相当する成分を粒状を細かく均一に分布させる事により、基地の結晶粒が粗大化しにくくなっている。)

それとマルテンサイト自体の様子も大分違う。
炭素鋼は笹の葉状にバサバサした組織だ。
マルテンサイト変態はオーステナイト結晶の粒界から始まり、内部に向かって進むそうだ。溶け込んだ炭素量が多いほどバサバサした状態になるらしい。
D2の様な合金鋼の場合は結晶粒が小さい事もあるが、そもそもオーステナイトに溶け込める炭素量がすくないので、結晶内は炭素鋼の様にバサバサした状態にはならないのかもしれない。

炭素鋼も合金鋼も焼入れ温度過熱では、刃先は脆くポロポロ欠けやすい物になってしまう。
過熱焼入れはその後の処理ではどうにもならない・・・


2020年1月20日月曜日

暖冬なのか?

昨日の猟はボウズだった・・・
久しぶりに勢子をやった。
雄鹿二頭がタツマに掛かったのだが、撃つ前に気取られて切られてしまったとの事・・・いいとこに来ていたのに残念w
しかし逃げた鹿は勢子の方に行ったのに、何処を切られたのかが分からなかった。
まあ獲れなかったが面白かったw
今猟期は暖冬なのか雪が少ない。
山の上の方には鹿の大きな群れがいる様だが、雪が少なく群れが下りてこない。雪が降ってくれればなぁ・・・

2020年1月15日水曜日

使い分け

 年明けから工場長は飯食うと口をモグモグしてなんか変・・・
口を開けさせて見たら、右上の犬歯が無くなってた。
何年か前に右下の犬歯が抜けて、さらに奥歯も抜けていたので、右側の歯がほとんど無くなってしまった・・・
今年で12歳になるからしゃあないか。
まだまだ元気だしなw
 このところ投稿さぼってるが、相変わらずで作ってる。
外形はコンター使って、ブレードの粗削りとハンドル整形はバーキング、ヒルトの溝切は横フライスと、機械を使う様になったが、肝心なところは今までと変わらない。
ブレードの切削は鉄工ヤスリだし、研磨は手作業でやっている。
ほぼ全て手作業で作ってた頃と、出来上がった物の品質はほとんど変わらない。
変わったのは効率が上がっただけ。
機械は効率よく作業するための物だ・・・








バーキング駆使してホローグラインドで作れば、さらに効率が上がる事は分かっている。
しかしそこまでして作りすぎても仕方がない。
多少手間は掛かっても、実費を抑えて作れる今の方法がいいと思っている。
そもそも実用ならホローより、薄いフラットグラインドの方が使いやすいし・・・



 RWL34は粘りがある。
低温焼き戻しで使ってもいいのかもしれない。
ちょっと迷うところだ・・・

 とりあえず色々作ってる。
https://twitter.com/LnSsC6TqPJZaepn
最近はその日やった作業はtwitterの方に書いている。
ブログはなるべく残しておきたい事を書く様にしようと思う。
有用な情報を残すにはブログの方がいい。
くだらない事で埋めるのももったいないしねw



2020年1月13日月曜日

取れそう・・・


昨日の猟は比較的下の猟場をやった。
例年なら雪があるはずだが全くなかった・・・
今回もタツマをやった。
開始早々ワンコが早速やって来た。獲物を追っていた様だが姿は見えない・・・稜線を越えて戻って行った。
 その後ひたすら待つが、獲物の来る気配はない。
勢子が近づいて来て、見張ってる目の前の斜面を左から右に騒ぎながら横切るが、上の方過ぎて姿は見えない。その下を攻める勢子はちょっと遅れている様だ。
勢子が通り過ぎたと思ったら、目の前の斜面をガサガサと何かが下りてきた。勢子が下りてきたのか?と一瞬思ったが獲物が来た様だ。
目の前は立木があって全く姿が見えない。勢子と逆方向に斜面を斜めに下りてきてる。このままいけば下のタツマに掛かるはずだ。
待っていると下のタツマで銃声が二回聞こえた。無線で「獲った~」と聞こえたが、それっきりで応答がない・・・
しばらくしたら下側を攻めてる勢子が来た。その辺に飛び下った跡があるか聞いたら、獲物の下りてった跡があるという。先の勢子をやり過ごして出てきたみたいだ。下側の勢子が遅れてなかったら、また違った結果になっていたかもしれない・・・


 無線が通じずどうしたのか?と思って下のタツマに行ったら、若い雄鹿が獲れていた。今猟期から猟をやり始めた新人で、内蔵掻き出すのに難儀していた。鹿は二頭来たらしく、初めて獲物見て初めて撃って獲れちゃったそうだw
この日獲れたのはこの一頭だけだったが、他の勢子やタツマにも何頭か鹿が出たらしい。それなりに鹿の数はあった様だ。以前より少なくなったとはいえ、やっぱりまだ獲物はいるみたいだ。

 870の20inc平筒銃身の照門がもげそうになってるのに気が付いた。
何かに引っ掛けてしまったらしい・・・

よく見るとヒビが入って、そのうちもげてしまうのが目に見えてる。
無くなってしまうと狙いが付けられない・・・
しょうがないから、瞬間接着剤流し込んで固めておいた。
猟仲間の11‐87(1100か?)と見比べてみたが、レミントンのこの部分は同じ物を使ってるみたいだ。
これなら部品手に入るか?
猟期終わったら交換しよう・・・

2020年1月7日火曜日

ELMAX

自分で使うつもりはないのだが、鋼材として興味があったのでELMAXを調べてみた。
組成を見るとVとMoの含有量が多く、耐食性と耐摩耗性を狙ったプラスチック金型用の鋼材らしい。
焼入れ温度はSKD11などより高目でないといけないところが要注意。
低温焼き戻しと高温焼き戻しで試験片を作ってみた。






硬さは低温焼き戻しでHRc59.0、高温焼き戻しでHRc58.3だった。カタログ値からして、大体このぐらいなのかもしれない。
Vの含有が多いので、S30VやSPGⅡと同じ様に真空炉では硬さが出にくいと思われる。

硬さの測定だが、硬さ基準片を使って真値と表示値の差を知る必要がある。
硬さ測定は正確な値を得るには結構厄介だ。














顕微鏡で組織を観察した。600倍は横の画角が約100μmになる。
ELMAX生材600倍













ELMAX生材150倍 

ELMAX低温焼き戻し600倍
ELMAX低温焼き戻し150倍
 ELMAX高温焼き戻し600倍
ELMAX高温焼き戻し150倍













熱処理後は低温焼き戻しも高温焼き戻しとも、組織に大きな違いは見られない。
炭化物の多くは概ね3μm前後で、ややいびつではあるが均一に分布している。
Vの炭化物により研磨しにくい様にも思えるが、使った人によってはそれほど磨きにくくもなく、ミラーもきれいだと言う。実際のところどうなのだろうか・・・

今まではあまり気にしていなかったが、熱処理後と生材を比較すると、生材の方が炭化物がやや大きく見える。研磨とエッチングによるものかと思っていたが、どうも熱処理により固溶するからの様だ。
粉末鋼における比較的大きく均一に分布する炭化物は、溶製鋼における一次(共晶)炭化物に相当すると考え、熱処理においてはほとんど固溶しないものと思っていた。
しかし温度をいくら上げてもΓに全て完全に固溶はしないのは事実と思われる。
おそらく一次炭化物に相当するものを核に、二次炭化物成分が析出しているのではなかろうか。
粉末鋼の成り立ちを考えると、一次炭化物と二次炭化物の境目は曖昧なところがあるのかもしれない。鋼材の組成によっても炭化物の組成は変わる。(Cr系だとM7C3やM23C6といった違い)
粉末鋼で生材は妙に脆いが、熱処理すると脆さを感じないというのも、この辺が関係するのかもしれない。


2020年1月6日月曜日

二日続けて

 土日で出猟。先ず一日目。
比較的上の方の猟場でタツマをやった。
勢子達は「ゾロゾロいるぞ~」とか「斜面に大木倒したみたいに列になってる!」とか無線で聞こえるが、みんな距離が遠くて撃てなかったらしい・・・
勢子は沢山獲物を見たが、何故かうまい事タツマには掛からなかった・・・
最後の方で一番下のタツマで結構大きい雌鹿が一頭獲れた。
そのタツマは険しい場所だったので、解体して回収しようとしていたら、解体してる最中に背後を鹿の群れが通って行ったそうだ。
慌ててナイフ放り投げて銃を取ったが、あまりにも近すぎたのとゴム手袋をしていて引き金がうまく引けず逃げられちゃったらしい・・・残念w
猟場の上の方は獲物が溜まってる様だ。ここ数年そうだが、雪が少なくて下に降りてこないみたいだな・・・


二日目は明け方に降った雪が積もっていた。
この日は中間の高さの猟場をやった。
人数が少なかったので狭く囲う事にした。
タツマをやった。解禁日に入った場所だが、雪が積もって景色がまるで違う・・・
道に迷ってタツマに着くまでにえらい目にあったw
やっとの思いでタツマに着いたが、獲物の来る気配はない・・・
勢子もなかなか獲物を見つけられないでいた。
どうしたもんか・・・と思っていると、勢子が来る方向とは逆側から「バキバキ、ガサガサ・・・」と音が聞こえてきた。
獲物に姿は全く見えないが、スライド送って狙いを付けようとするが閉鎖しない!
機関部に雪が入って噛んでしまった様だ。道に迷った特に転んで入ってしまったらしい。
思いっきりスライドを送ったら「ガチッ!」といって閉鎖したが、その音で気取られたか気配が急に消えてしまった・・・
解除になってから分かったが、どうも気取られて戻って行って、上とその上のタツマの間を抜けていったらしい。どちらのタツマも死角になって見えない場所だった様だ・・・
結局この日はボウズだった。
獲物はやはり山の上の方に溜まっているらしい。
下の方もいない事はないが、上の群れからあぶれたのが少数いるだけみたいだ。
雪が少ないからしょうがないかw

2020年1月3日金曜日

一本目

 2incセミスキナーが完成した。
もとはHILTSさんのデザインだが、エッジ形状はちょっとだけ変えてみた。
標準のボルト(8㎜)を使うべきかと思ったが、インチサイズのラブレスボルトを使ってみた。でかすぎるかと思ったが、案外これもいいみたいだな。
 ブレードはスーパーゴールドⅡで、4.1㎜厚を削り抜いて実質2.6㎜厚になっている。

 ハンドルはタンキャンバスマイカルタを使った。
大きさの割には厚みを持たせてある。
 単なるデフォルメではなく、ちゃんと使えるデザインだと思う。この辺はHILTさんのデザインは絶妙だ。(使わせてもらって感謝!)
案外猪の皮剥ぎにはいいかもしれないし、普段の家の中の雑用に使ってもよさそうだ。

トリプルステッチで無駄にゴッついが、まあこんなのもありかな・・・
これぐらいの大きさならトリプルでも苦にならなくていいねw

2020年1月2日木曜日

撃ち初め

 射撃に行ってきた。
オープンエアな射場で気持ちいい。
寒さや標高が猟場に似ているので、照準確認にはちょうどいい。
20inc平筒銃身の870で、12番のレッドバードの狩猟用スラッグ使って50m膝撃ち。
5発撃って大体げんこつぐらいに纏まった。
立ち撃ちだとちょっと上下に多少バラつくが、アイアンサイトでこれぐらいなら十分か。
あとは 正確に素早く狙いを付けられるかだな・・・

レッドバードの弾は1発撃つと鉛カスがえらくこびり着く。
一回撃つ毎に銃身外して掃除した。
面倒ではあるが、銃身の冷却兼ねてちょうどいいのかもしれない。
一発目が肝心だからねw

富士山よく見えた。
うちから見るともうちょっと雪があるが、裏側は少ないんだな・・・