2020年1月7日火曜日

ELMAX

自分で使うつもりはないのだが、鋼材として興味があったのでELMAXを調べてみた。
組成を見るとVとMoの含有量が多く、耐食性と耐摩耗性を狙ったプラスチック金型用の鋼材らしい。
焼入れ温度はSKD11などより高目でないといけないところが要注意。
低温焼き戻しと高温焼き戻しで試験片を作ってみた。






硬さは低温焼き戻しでHRc59.0、高温焼き戻しでHRc58.3だった。カタログ値からして、大体このぐらいなのかもしれない。
Vの含有が多いので、S30VやSPGⅡと同じ様に真空炉では硬さが出にくいと思われる。

硬さの測定だが、硬さ基準片を使って真値と表示値の差を知る必要がある。
硬さ測定は正確な値を得るには結構厄介だ。














顕微鏡で組織を観察した。600倍は横の画角が約100μmになる。
ELMAX生材600倍













ELMAX生材150倍 

ELMAX低温焼き戻し600倍
ELMAX低温焼き戻し150倍
 ELMAX高温焼き戻し600倍
ELMAX高温焼き戻し150倍













熱処理後は低温焼き戻しも高温焼き戻しとも、組織に大きな違いは見られない。
炭化物の多くは概ね3μm前後で、ややいびつではあるが均一に分布している。
Vの炭化物により研磨しにくい様にも思えるが、使った人によってはそれほど磨きにくくもなく、ミラーもきれいだと言う。実際のところどうなのだろうか・・・

今まではあまり気にしていなかったが、熱処理後と生材を比較すると、生材の方が炭化物がやや大きく見える。研磨とエッチングによるものかと思っていたが、どうも熱処理により固溶するからの様だ。
粉末鋼における比較的大きく均一に分布する炭化物は、溶製鋼における一次(共晶)炭化物に相当すると考え、熱処理においてはほとんど固溶しないものと思っていた。
しかし温度をいくら上げてもΓに全て完全に固溶はしないのは事実と思われる。
おそらく一次炭化物に相当するものを核に、二次炭化物成分が析出しているのではなかろうか。
粉末鋼の成り立ちを考えると、一次炭化物と二次炭化物の境目は曖昧なところがあるのかもしれない。鋼材の組成によっても炭化物の組成は変わる。(Cr系だとM7C3やM23C6といった違い)
粉末鋼で生材は妙に脆いが、熱処理すると脆さを感じないというのも、この辺が関係するのかもしれない。


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