2018年10月12日金曜日

たたらを見てきて・・・

書いてはみたが、公開していいものか迷ったがSNS上では結構出ていたので、折角だからこちらにも出しておく。記憶違いや認識の誤りがあるかもしれないが、そういった点はご指摘頂けるとありがたい・・・

 たたらの全景。
炉の底部は耐火煉瓦を組んで、内部に粘土を塗り込んで炉壁としている。
上部は土管を積んでいる。
送風は片方が人力の鞴で、一方は電動ブロワーが付いている。
炉の底は切ったドラム缶を埋めてあり、炭を詰め込んで固めた物(カーボンベッド)が炉底になる。
炉底は地面とすれすれの位置になり、ここに還元された鉄が溜まる。
炉壁には穴が開いていて、これがノロ(スラグ)の排出口になる。
炭を切る。
7俵程あった?
3~4cm角ぐらいの大きさだったか。
粉塵が凄い・・・
粉や破片はノロ出口を塞ぐのに使う。

鉄鉱石。
操業はじめに投入して、ケラ(還元して出来た鋼)の種になるらしい。

 鉄鉱石は予め砕いておく。















肝心の砂鉄。
真砂砂鉄だそうだ。これを洗濯糊で固めて板状にしている。
昨年は赤目砂鉄で固めずに使ったらしい。
真砂砂鉄は所謂磁性酸化鉄で四酸三鉄(Fe3O4)が主成分らしい。
赤目砂鉄は磁性酸化鉄の他に酸化第二鉄(Fe2O3)を多く含有するそうだ。



 炉を上から覗くとこんな感じになってる。
炉内を乾燥させるため、薪を燃やして予熱していた。
炉底のカーボンベッドが燻っている。










そろそろ操業開始。
炭を投入して燃やし始める。


ノロの排出口はレンガで閉じて回りを粉炭をかけて密閉する。
粉炭はたまに燃え出すが、炭をかけたり水を撒いて消化する。
粘土で塞がないのは開閉をしやすくするためだそうだ。

ある程度の火力になったら、先ずは鉄鉱石を投入する。
しばらくたってからいよいよ砂鉄を投入する。
原料の投入に伴い炭も投入する。
炉は結構キチキチに詰めていた。
すりきりまで詰めていた内容物がある程度下がったら、また砂鉄と炭を投入する。
15分間隔(だったっけ?)にこれを行い、一回の砂鉄の量は1㎏(だったっけ?)投入していた。


最初のノロ出し。
うまい具合に流れてこない・・・

掻き出して僅かにでてきた。
ノロは還元されて落ちてきて底にたまった鉄の表面に被ってるらしい。鉄の酸化防止に役に立つ。要はアーク溶接でいうスラグの働きをする訳だ。
ノロ自体は炉壁が溶融する事で出来る様だ。フラックスの働きもあるので、脱酸作用や不純物の排出に役に立つのだと思われる。
放っておくとノロはどんどん溜まってくる(はず・・・?)ので、時折排出する必要がある様だ。
炉内は還元雰囲気にする必要がある。
一酸化炭素ガスが燃えてる状態なんだな。
明るいうちだと分かりにくかったが、日が暮れて暗くなると炎の色合いで燃焼状態がなんとなく分かる。
画像だと炉から出た途端は還元炎だが、外気と触れて上に行くに従い中性炎から酸化炎に変化している様だ。
途中何回かノロ出しをするが、やっぱり流れ出ない。
掻き出すと出てくるが、流動性が悪い様に見えた。
肝心のケラ(出来上がりの鋼)も炉底の何処にあるのか定かではない様だった。
掻き出したノロ(スラグ)。
ちょっと硬めなのか?
僅かながらに鉄の粒が混じっていた。
還元はされている様だ。

砂鉄と炭を投入した回数は何回だったっけ?
最後の方は板状に固めた砂鉄でなく、去年使ったという赤目砂鉄を水で練って投入した。
頃合いを見て炉の解体に移る。

炉の内部はえらい熱量で満ちていた。
放射熱がもの凄く、近付くのがとても辛い。
炉内のまだ燃えてる炭をかき分けケラを探す。しかしなかなか出てこない・・・

炉を分解して行ったら、炉底に潜り込んだ形でケラが出てきた。
斧を使ってケラを割る。
樽に張った水の中に投入。

出来上がったケラは大部分が溶融した形跡があり、ノロと混じった塊になっていた。
過剰に吸炭してズク(銑鉄)になっている様だ。
よくよく観察してみると、ズクの固まりの上にケラ(よく見る玉鋼・・・炭素量が比較的低い鋼)が少量出来ていた。
おそらく最後の方に入れた赤目砂鉄によるものみたいだ。

グラインダーで炭素量を見てみる。
かなり炭素量が多そうだ。

今回出来た鉄はおおよそ5㎏だったそうだ。
炭素量が多いがちょっと手間ではあるが、卸し鉄をすれば十分使えそうとの事だ。









たたらによる砂鉄の還元は半熔融状態で推移するそうだ。

単純に状態図に当てはめる事はできないが、傾向はこれに近いと思われる。
砂鉄から還元された鉄は状態図のΓ+Lの領域にある。
羽口の上方で砂鉄は還元されて鉄になるが、鉄は半熔融状態で羽口付近の炭の間を流れて炉底に滴下する訳だ。
炭の間を流れる間に吸炭するはずだが、半熔融状態の中の固相状態のΓがCを固溶しているのだと考えられる。
Γに固溶するC量は図の赤線に沿って推移する事になる。
温度が上がる程に固溶するC量が減る傾向になる。焼入れとは逆なんだな。
羽口の温度が低いと吸炭量が増えて、温度が高い方が吸炭量が減ると考えられる。
炭素量0.5~1.0%の鋼を得ようとすると、羽口付近の温度は1350~1450℃に保つ必要がある様だ。(あくまで平衡状態なので、実際にはずれがあるが・・・)

今回板状にした真砂砂鉄だと熔融した状態になったのは、炉内の沈下速度が遅かったからではなかろうか。
板状に固めて投入したため、炉内の初期の段階で固まりになり、炭の間を通過するのに時間が掛かったと思われる。
羽口上部の比較的温度が低い位置で吸炭が促進されて、羽口付近の一番温度の高い部分を通過する頃には炭素含有量が高くなり融点が下がったため、溶融状態になり炉底に溜まったものと考えられる。
赤目砂鉄だとケラになったのは、水で練っただけだったので炉内ですぐにバラけて、停滞する事なかったからなのかもしれない。

出来上がったズクとケラが炉底に潜り込んでいた原因は、初期の段階でノロが十分に出来ず、カーボンベッドが浸食されたからなのかもしれない。十分空気を遮断できなかったからと思われる。
ノロは炉の中に塗った粘度が溶け込む事により生成するそうだが、初期の段階では炉壁の温度が十分上がらず、ノロの生成が十分でなかったと思われる。
砂鉄は予め十分選別していたそうだが、これもノロの生成が少なかった原因になるのかもしれない。砂鉄に含まれる不純物にはノロになる成分が含まれているそうだ。(珪酸塩等)
場合によっては砂鉄と一緒にノロになる成分や、ノロの発生を促進する成分を投入するのがいいのかもしれない。

ノロはケラの上で熔融状態になってないといけないが、ズクの中にノロが噛んでる状態を見ると、粘度が高く流動性が悪かったのかもしれない。
ノロの成分に問題があったのかもしれないが、もしかしたら温度が低かった可能性もある。
羽口をもっと炉底に向けて、温度が十分上がる様にした方がいいのかもしれない。

今回は2日目の操業だけ見れたが、初日から参加して炉を作るところから見てみたかった。炉の内部構造をもっと詳しく知りたい・・・
たたらはなんとなくしか原理を知っていなかったが、実際を見る事によってより多くの事を知る事ができた。とても興味深かった。
ちっと遠かったが行ってよかったw




2 件のコメント:

  1. プルトニュウムは日本に余っているらしいから
    製鉄用高温ガス炉を作るときは呼んでください

    全力で国外逃亡しますから

    猫男爵

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  2. 昔読んだ本には未来の技術として原子力製鉄ってのがあっただな。
    原子力飛行機ってのは飛んだんだっけ?w

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