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2020年5月16日土曜日

ベアリング

 ちっと気になる事があって、ベアリングの組織を観察してみた。
何のクルマのだったかは忘れたが、ハブベアリングのインナーレース。
多分SUJ2なんじゃなかろうか。
ちなみに硬さはHRcで約61あった。
 先ずは600倍。横の画角が約100μm。
炭化物は大きくても1μm程度で、均一に分布している。


 これは150倍。
研磨とエッチングの問題でやや分かりにくいが、組織は細かく緻密だ。
ベアリングは摩耗や疲労破壊などの条件が厳しい。用途的に全く違くはなるが、刃物も条件としてはベアリングに準ずるところがある。
理想的な刃物も本来この様な組織になるべきだ。
しかし意外と鍛冶屋さんの作った炭素鋼の刃物を見てみると、理想の状態からはかけ離れたものが多い。
多くが炭化物の球状化が不十分か、焼入れ温度過多のものが多い・・・
 これは大分前に自分で焼鈍して板上にしたベアリングのアウターレース。
クラウンのリアハブに使ってたやつだったかな・・・
 ちょん切って磨く。
エッチングして組織を観察してみる。

 先ずは600倍。
やや炭化物同士のつながりが見られるが、概ね悪くはない状態の様だ。

これは150倍。
組織が粗くなってる事もなく、意外とよさそうだ。
大分前にやったからよく覚えてないが、確かガスバーナーで高温になりすぎない様に焙って、薪ストーブから集めた灰の中に入れて徐冷して焼き鈍した。
焼き鈍したあとは金鋸で切って、適当に温めながら叩いて開いた。
ベアリングはもともと組織が細かいので、鍛造する必要はなく、なるべく組織が痛まない様に加工すればいい様だ。

刃物の組織については尾上先生の「刃物のおはなし」や岩崎航介氏の「刃物の見方」に詳しく記されている。
理想の状態から外れていても案外使えるものだが、繊細な切れ味や刃持ちってのは組織がしっかりしていないといけない。
難しいもんだなぁ・・・

2020年5月2日土曜日

違うぞ・・・

磨いて名入れしてヘアライン引いた。
スーパーゴールドⅡなのだが、とても磨きにくかった。RWL34から比べると三倍は手間が掛かった気がする。
スーパーゴールドⅡはものによって磨きにくい時がある。初めの頃は熱処理によるのかと思っていた。
高温焼き戻しだと粘って磨きにくいが、低温焼き戻しだとサラサラと磨ける。
確かにそんな傾向はあるのだが、どうもそれだけではない様だ。
鋼材の製造ロットによって違いがある気がしていた。
 顕微鏡で組織を見てみた。今回の磨きにくかったスーパーゴールドⅡの熱処理済み600倍。横の画角が約100μm。

 これは以前作ったSPGⅡの試験片で、熱処理条件は同じ。同じく600倍。
見比べると試験片の方が炭化物が僅かに大きいが、密度が疎らに見える。


 150倍で見るとさらに良く分かる。
これは今回のSPGⅡ。
炭化物の密度が高い。

 こっちが試験片の150倍。
炭化物の分布状態が明らかに違う。
磨きにくかったSPGⅡの方が細かく一様に分布している様に見える。

磨きにくいのは炭化物が大きいのかと思っていたが、どうもそうではない様だ。
SPGⅡはVによる硬い炭化物が、細かく均一に分布する事で、耐摩耗性が高くなっている。
そういった意味では刃物としては磨きにくい方が向いてるのかもしれない。
しかし何故この様な違いが出てしまうのか・・・様々な原因は考えられるが、工業製品としては仕方のないバラつきなのかもしれない。

金属顕微鏡はとても役に立っている。
「刃物の見方」の著者の岩崎航介氏は苦労して金属組織を観察したと思われる。当時の金属顕微鏡を使って組織の写真を撮るのは、えらく労力が掛かった事だろう。
今は二束三文の値段で、ボロいとは言え十分使える金属顕微鏡が手に入るのだから・・・
 鹿角ハンドルを接着して、もう一本はヒルト付けてハンドルの用意をした。

工場勤務のヌコどもはダレてきた。
そういやあんこは昨日で11歳になったw

2020年1月31日金曜日

二度焼入れすると・・・

 RWL34の熱処理終わったブレードなのだが、訳あってもう一度熱処理した。
粉末鋼なので炭化物によるピン止め効果があるから大丈夫だと思っていた。
しかし組織を観察してみたら、見事に焼入れ過熱の組織になっていた。
画像は600倍、横の画角が約100μm。
基地にひび割れがあり、典型的な過熱組織になっている。
こちらは適正な熱処理をしたRWL34の組織。

過熱組織はおそらく炭化物が過剰に溶け込んだからなのだと思う。二度続けて焼入れする事で、必要以上に溶け込んで過熱焼入れと同じ状態になったと思われる。
硬さを測ってみたところ、想定したより低かった。これも過剰に炭素が溶け込んで残留オーステナイトが増えたからと考えられる。サブゼロをやっていても低温焼き戻しの場合は10~20%程度は残るそうだ。

再熱処理するときはどうするべきか?
おそらく一度焼鈍してから行えばいいと思う。炭素を吐き出して炭化物に戻しておけばいい。
しかし応力除去の焼鈍しと違って、焼きの入った合金鋼の焼鈍しはなかなか難しい。
結局のところ焼入れのやり直しはやるべきではないんだなw

一つ面白いと思ったのは、過熱組織のひび割れは炭化物で遮られて、それ以上伸びてはいない。
ひび割れはオーステナイト結晶粒の結晶粒界であるわけだが、均一に分布した炭化物により結晶の成長が妨げられているのだ。これがピン止め効果なんだな。
画像で見える4μm前後の炭化物は溶製鋼でいうところの共晶(一次)炭化物に相当するので、溶融する寸前まで加熱しても変化しない。
この部分が粉末鋼の本質なんだ。これが見れただけでも失敗した甲斐はあったw


試しに研いでみたが、とりあえず刃は付いた。
しかし確実に靭性は低いと思われる。もともと粘る粉末鋼なので、案外それなりには使えるのかもしれない。
残念ながらこれでは表には出せない・・・
しかしもったいないのでとりあえず完成させて、自分で使ってみる事にしようw

2020年1月24日金曜日

炭素鋼と合金鋼の違い

以前書いた過熱焼入れの炭素鋼の組織
概ね旧オーステナイト結晶粒は赤線で示した感じになってると思われる。

こっちはやはり以前書いたD2の過熱焼入れの組織
これの場合は旧オーステナイト結晶粒はこんな感じと思われる。






条件の違いもあるが同じ過熱焼入れ組織でも随分様子が違う。
炭素鋼が過熱しすぎと言う事もあるのかもしれないが、旧オーステナイト結晶粒がD2の場合はそれ程極端に大きくなっていない。
おそらくD2の方は基地に溶け込まない一次(共晶)炭化物があって、基地のオーステナイト結晶粒が成長しにくいのではないだろうか。(余談になるが粉末鋼はこの性質を利用している。一次炭化物に相当する成分を粒状を細かく均一に分布させる事により、基地の結晶粒が粗大化しにくくなっている。)

それとマルテンサイト自体の様子も大分違う。
炭素鋼は笹の葉状にバサバサした組織だ。
マルテンサイト変態はオーステナイト結晶の粒界から始まり、内部に向かって進むそうだ。溶け込んだ炭素量が多いほどバサバサした状態になるらしい。
D2の様な合金鋼の場合は結晶粒が小さい事もあるが、そもそもオーステナイトに溶け込める炭素量がすくないので、結晶内は炭素鋼の様にバサバサした状態にはならないのかもしれない。

炭素鋼も合金鋼も焼入れ温度過熱では、刃先は脆くポロポロ欠けやすい物になってしまう。
過熱焼入れはその後の処理ではどうにもならない・・・


2020年1月7日火曜日

ELMAX

自分で使うつもりはないのだが、鋼材として興味があったのでELMAXを調べてみた。
組成を見るとVとMoの含有量が多く、耐食性と耐摩耗性を狙ったプラスチック金型用の鋼材らしい。
焼入れ温度はSKD11などより高目でないといけないところが要注意。
低温焼き戻しと高温焼き戻しで試験片を作ってみた。






硬さは低温焼き戻しでHRc59.0、高温焼き戻しでHRc58.3だった。カタログ値からして、大体このぐらいなのかもしれない。
Vの含有が多いので、S30VやSPGⅡと同じ様に真空炉では硬さが出にくいと思われる。

硬さの測定だが、硬さ基準片を使って真値と表示値の差を知る必要がある。
硬さ測定は正確な値を得るには結構厄介だ。














顕微鏡で組織を観察した。600倍は横の画角が約100μmになる。
ELMAX生材600倍













ELMAX生材150倍 

ELMAX低温焼き戻し600倍
ELMAX低温焼き戻し150倍
 ELMAX高温焼き戻し600倍
ELMAX高温焼き戻し150倍













熱処理後は低温焼き戻しも高温焼き戻しとも、組織に大きな違いは見られない。
炭化物の多くは概ね3μm前後で、ややいびつではあるが均一に分布している。
Vの炭化物により研磨しにくい様にも思えるが、使った人によってはそれほど磨きにくくもなく、ミラーもきれいだと言う。実際のところどうなのだろうか・・・

今まではあまり気にしていなかったが、熱処理後と生材を比較すると、生材の方が炭化物がやや大きく見える。研磨とエッチングによるものかと思っていたが、どうも熱処理により固溶するからの様だ。
粉末鋼における比較的大きく均一に分布する炭化物は、溶製鋼における一次(共晶)炭化物に相当すると考え、熱処理においてはほとんど固溶しないものと思っていた。
しかし温度をいくら上げてもΓに全て完全に固溶はしないのは事実と思われる。
おそらく一次炭化物に相当するものを核に、二次炭化物成分が析出しているのではなかろうか。
粉末鋼の成り立ちを考えると、一次炭化物と二次炭化物の境目は曖昧なところがあるのかもしれない。鋼材の組成によっても炭化物の組成は変わる。(Cr系だとM7C3やM23C6といった違い)
粉末鋼で生材は妙に脆いが、熱処理すると脆さを感じないというのも、この辺が関係するのかもしれない。


2019年12月3日火曜日

ジェネリック?

 この前マトリックスアイダに行った時に、テストピースを預かってきた。
サンドビックの10C28Mo2という鋼材らしい。CRMO7の代替品として今後扱うそうだ。
0.5%C.14%Cr.1.0%Mo.0.08%Nという組成の様だ。若干の違いはあるが銀紙7号と言われるCRMO7とかなり近そうだ。
10C28Mo2もおそらく剃刀用の鋼材なんだと思う。もしかしたら銀紙7号を使ってた剃刀メーカーが、別の供給元としてサンドビックに相当品として作らせているのかもしれない。もしくは銀紙7号の特許が切れたか?


硬さを測ってみた。
熱処理はマトリックスアイダでCRMO7の条件でやってあった。熱処理屋さんの測定ではHRaで81.0となっているので、HRc換算だと59~60ぐらいの様だ。
うちで測ったらHRc59.5だった。
通常CRMO7は59いくかどうかってとこなので、若干硬めになっているのかもしれない。


 組織を観察してみた。
耐水ペーパーで2500番のまで磨いて、希硫酸とアルコール(ラム酒w)の混合液でエッチングした。
先ずは600倍。横の画角がちょうど100μm。
炭化物は非常に細かい。大きいものでも2μm内に収まっている様だ。
これなら研ぎ上げると滑らかな刃が付きそうだ。

これは150倍 。
CRMO7より細かくていいかもしれない。
サンドビックは鉄の原料に何を使ってるか分からないが、よい原料を精製しているなら悪くなさそうだ。
 参考までにCRMO7も。研磨とエッチング方法は同じ様にやった。
先ずは600倍。
一次炭化物がないというのが売りだったが実際には微妙にあって、5μm前後の歪な多角形の炭化物として存在している。


これは150倍。
研磨傷が残って分かりづらいが、縦方向にメタルフローがある。
CRMO7は磨いた表面に微妙に縞模様が出る事があったが、僅かに残っている一次(共晶)炭化物が圧延方向に鍛流線として出る様だ。
安全カミソリは0.何㎜かのリボン状だが、ナイフ用のフラットバーだと圧延比が足りないのかもしれない。





10C28Mo2はなかなかよさそうだ。今後に期待したい。
しかしサンドビックの鋼材は名前を何とかしてほしい。覚えにくくてしゃあないw

2019年10月10日木曜日

球状化焼鈍しの重要性


 焼入れ時の炭化物のピン止め効果については以前何度か書いた。炭化物の球状化焼鈍しが重要なんだ。
焼入れは基地の鉄をオーステナイトに変態させ、炭化物を分解して基地に溶け込ます必要がある。
結晶粒界に炭化物が残ってると杭の様になって、隣同士の結晶粒が合体しにくくなる。

 焼入れ温度を上がるか保持時間を長くすると、炭化物は溶けてなくなっていく。
ピン止めの効果がなくなり、結晶粒が粗大化してくる。











炭化物が完全に溶けてしまうと、オーステナイトの結晶粒はとても大きなものになる。完全にオーバーヒートな状態だ。


前にも書いたが過共析鋼の場合、焼き入れはA1線とAcm線の間で行うべきだ。
Acm線を越えて炭化物を全て溶け込ませてしまうと3枚目の絵の様になる。
過共析鋼の場合、炭素量が多いほど焼入れ温度の幅が広がるので、焼き入れはしやすくなる。但し硬く伸びにくくなるので、鍛造はやりにくくなるが・・・

炭素はどのぐらい溶け込ませればいいのか?
この図はよく見られるものだが、これの横軸はマルテンサイトに固溶した炭素量を本来は示している。鋼の炭素量ではない。
マルテンサイトへの炭素の固溶量が多すぎると組織が脆くなる。せいぜい0.6~0.7%程度までにするべきだ。

基地のオーステナイトに溶け込ませる炭素量は温度によって決まってくるが、それにはある程度の時間が掛かる。炭素鋼でも保持時間は10分近く必要な場合もある様だ。
前に書いたがコークスや炭を使った火床の場合、加熱温度を高める事で保持時間を短縮しているのだと思う。さすがに火床で温度を一定に数十分保つのは難しいし、何より作業効率が悪くなる。

焼入れはおそらく高めに加熱して炭素量を必要十分に溶け込ませ、炉から取り出し色合いを見てタイミングを計って冷却に移るのだと思う。
ある程度炭化物が溶け残っている状態ならば、そこからA1線を下回らない(下回ると基地にフェライトが出てくる)範囲で徐冷すれば、吐き出された炭素は溶け残った炭化物を核に取り込まれて成長するので、元の球状炭化物に戻る。

ところが過熱しすぎて炭化物が残っていない状態だと、吐き出された炭素はオーステナイトの結晶粒界に沿って炭化物が成長する。いわゆる網状の初析炭化物だ。
硬い炭化物が結晶粒界に沿ってできるので、非常に脆い組織になる。

炭化物を球状化して大きさと分布状態を揃えるってのは重要な事なんだ。
大きさや分布が不揃いだと、部分的に炭素の固溶量に濃淡が生じて焼き割れの原因にもなると思われる。



2019年9月1日日曜日

デンドライトの真相

デビッドボウイのデンドライトスチールの硬さを測ってみた。ハンドルの周りが平面出ているので、ここで測ってみた。硬さは測定面が平面で裏表平行になっていないと正確な測定ができない。
測定値はバラつきが大きかったが、概ねHRcで58程度の様だ。
440Cだとすればそのぐらいなのかもしれない。







組織を見てみた。
150倍。
樹枝状組織とはこんな感じなんだな。
やはり巨大なインゴットを鋳込んだ時の様な発達した樹枝状ではない様だ。




300倍。
ウネウネとしているのが一次炭化物に相当するものと思われる。
紐状につながってはいるものの、所々で切れて、ある程度の単位で塊になっている様に見える。



 600倍。横幅がちょうど100μmになる。
小刃を磨いてエッチングして観察しているので、ちょっと不鮮明な画像なのは勘弁w
一次炭化物は紐状に成長して不規則に絡まる様に分布している。
二次炭化物は定かではないが、微小な黒い点だ見えるものがそうだろうか・・・?
基地の結晶粒は粗くは見えない。
なんとも不思議な組織だ。
紐状の絡まった炭化物が刃先に出る事で、独特の切れ味になると思われる。思ったより基地も粗くないので、脆さも感じる事はない。

 比較用のガーバーのフォルダー、これは一般的な440C。
150倍。
白く比較的大きい塊が一次炭化物。


 300倍。
やや一次炭化物が少ない気がする・・・
もしかしたら440AかB?
600倍。
二次炭化物が溶け残っていて、基地の粗大化も見られない。適正な熱処理がされてる様だ。

こうして比較してみると、デンドライトスチールとは不思議な組織をしている。
鋳物という事ではあるが、単純な鋳物ではない。
結構絶妙なものなのかもしれない。
金属顕微鏡が二台になった・・・
出物があって思わず買ってしまった。
持ってた物と同じ機種なのだが、今度の方が程度がよかった。
照明の電源も付いていた。
この世代の機種なら2万円内で入手できれば、お買い得なのかもしれない。

2019年7月22日月曜日

原因は?

スーパーハイエンドコレクター?のK氏より調査依頼を受けた。
バックのシースナイフが研いでも刃が付かないそうだ。
ランスキーで研いでいたらしいが、グズグズ崩れて刃にならないとの事。
比較に良品の3ブレードのフォールディングナイフを預かった。
試しに研いでみた。
バックは妙に硬い感じで、確かに切れる刃がなかなか付かない・・・というか切れないw
3ブレードのホルダーは普通に研げて簡単に刃が付いた。


バック600倍
600倍は横方向が約110μmになる。
共晶(一次)炭化物の形状や大きさからしてD2なのは間違いなさそうだ。多角形で歪な形状の物が共晶炭化物。
画像では不鮮明だが、肉眼での観測では基地の結晶の粒界が見られる。
全体的に二次炭化物(析出による炭化物)は少なくなっている。
おそらく焼入れ温度過熱により二次炭化物の固溶量が多くなってるのだろう。
それに伴い基地の結晶粒が成長して粒界が見られる様になったのだと思われる。
この状態だと脆くなってポロポロと刃が欠けやすくなる。

バック150倍
150倍は横方向が約420μmになる。
横方向がブレードの長手方向。
なんとなく横方向に鍛流線があるのが分かるが、もう少し倍率を下げるとはっきり横方向に確認できた。

 3ブレードフォルダー600倍
共晶炭化物が大きく疎らではあるが、その間に小さく丸く分布している物が二次炭化物と思われる。比較的多く溶け残っている。
これの基地の結晶粒界らしきものは観察できなかった。
概ね適正な熱処理がされていると思われる。


 3ブレードフォルダー150倍
横方向がブレードの長手だが、共晶炭化物はランダムに分布していて、鍛流線ははっきりしない。
D2ではある様だが、こちらはクロスロール圧延で方向性がないのかもしれない。
 SLD生材600倍
参考にD2に相当する日立のSLDを観察した。熱処理前の生の状態。
共晶炭化物の間に、細かい二次炭化物が概ね一様に分布している。
焼入れで固溶するのは二次炭化物で、共晶炭化物は固溶しない。
焼入れ温度が高くなるほど二次炭化物の固溶量が増える。
基地の結晶は炭化物が障害になって結晶の成長は抑制されるのだが、炭化物が固溶してなくなると隣同士の結晶が合体して結晶粒が粗大化する。
熱処理の良否は生材の炭化物の分布状態に影響される。
 SLD生材150倍
日立のSLDは共晶炭化物が比較的細かく粉砕されている様だ。
安来で日立の人に会って話を聞いたら、「うちは圧延比大きいからw」と言っていた。相当大きいインゴットから圧延するのだろう。
同じ規格で成分も変わりがなくても、メーカーによる違いはこういったところに出るのだろう。
 SLD適正温度焼入れ600倍
SLDは実験で熱処理条件を変えて試験片を作ってあったので、参考までに載せておく。
これは適正な条件での熱処理したもの。
生材と比較すると、やや二次炭化物が減っている様だが、それほど大きく違いはない。






SLD過熱焼入れ600倍
焼入れ温度が適正より50℃ほど高い。
明らかに二次炭化物の量が減っている。
画像では分かりにくいが、基地にひび割れの様に結晶粒界が見える。
状態としてはバックと同じだ。
刃が付かないのは焼入れ温度過熱が原因で間違いなさそうだ。






合金鋼の焼入れ温度過熱の組織は、炭素鋼のそれとは大分様子が違う。
これについてはいくつかの理由があるのだが、またの機会にでも書きたいと思う。
一つ言えるのは、高合金鋼と炭素鋼は全く別の素材と思った方がいいという事。

試験片を作って持っていたので、それらの観察で考察する事ができた。
金属顕微鏡を使う様になって、色々な事が分かってきた。面白いおもちゃだw